高等植物における二次代謝産物生成の制御機構

大学院自然科学研究科 理学専攻 生命科学講座
助教・寺本進

URL:http://www.geocities.jp/teraken2004/
E-mail:dopa@aster.sci.kumamoto-u.ac.jp
私達が知りたいこと
 植物には何万という種類のポリフェノール化合物が含まれており、それらは病気の予防や治療に役立つと考えられています。 しかしながら、なぜポリフェノール類が植物で合成され蓄積されるのか、つまり存在意義についてはよく分かっていません。 生物は無駄なことはしないので、植物にとって何らかの重要な役割があるはずと考えて、研究を行っています。 そして、そのポリフェノール化合物の中でも、ベタシアニンという赤色色素に着目しています。 ベタシアニンは一群の植物(ナデシコ目)の花弁や茎などに存在する赤色色素ですが、その研究はアントシアニンと比べて大きく遅れています。 そこで私達は、ベタシアニンの生合成される推定経路のうち、チロシンからジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)への水酸化反応を中心に、関連する酵素の発見や生合成の仕組みを調べています。
ベタシアニンの前駆体であるDOPAを著量に含むハッショウマメ。関連酵素活性も高いので、良い実験材料です。
ここ数年の研究内容
 ほとんどの植物にはポリフェノール類をキノン類へと酸化するポリフェノールオキシダーゼ(PPO)という酵素が含まれています。 PPOによる褐変化が起こると作物の商品価値が一気に落ちるので、園芸や果樹の分野では大問題です。 しかしながら、依然として未解明な事は、なぜPPOが植物に存在するのかと言うことです。そこで私達は、通常は酵素活性を示さない、いわば眠らされているPPO(不活性型PPO)について調べています。 つまり、不活性型PPOの活性が発現される特別な場合が分かれば、その時こそがPPOの存在理由を示しているからです。

可能な技術提供;
酵素精製、植物細胞の培養、色素精製

ベタシアニン生合成経路のうち、チロシンからDOPAへの過程を中心に研究を行っています。


PPOの不活性型酵素が、いろんな刺激で活性化されるメカニズムの推定図です。
[キーワード] 植物培養細胞、ベタシアニン、ポリフェノール、PPO、チロシンヒドロキシラーゼ、ハッショウマメ(ムクナ)
近年、その生理活性が注目されているポリフェノール化合物のうち、ベタシアニン色素については抗酸化活性や抗ガン作用の報告がいくつかあるものの詳細には検討されておらず、有用物質としての大きな可能性があるのではないかと考えています。

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