植物には何万という種類のポリフェノール化合物が含まれており、それらは病気の予防や治療に役立つと考えられています。
しかしながら、なぜポリフェノール類が植物で合成され蓄積されるのか、つまり存在意義についてはよく分かっていません。
生物は無駄なことはしないので、植物にとって何らかの重要な役割があるはずと考えて、研究を行っています。
そして、そのポリフェノール化合物の中でも、ベタシアニンという赤色色素に着目しています。
ベタシアニンは一群の植物(ナデシコ目)の花弁や茎などに存在する赤色色素ですが、その研究はアントシアニンと比べて大きく遅れています。
そこで私達は、ベタシアニンの生合成される推定経路のうち、チロシンからジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)への水酸化反応を中心に、関連する酵素の発見や生合成の仕組みを調べています。
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ベタシアニンの前駆体であるDOPAを著量に含むハッショウマメ。関連酵素活性も高いので、良い実験材料です。 |
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ほとんどの植物にはポリフェノール類をキノン類へと酸化するポリフェノールオキシダーゼ(PPO)という酵素が含まれています。
PPOによる褐変化が起こると作物の商品価値が一気に落ちるので、園芸や果樹の分野では大問題です。
しかしながら、依然として未解明な事は、なぜPPOが植物に存在するのかと言うことです。そこで私達は、通常は酵素活性を示さない、いわば眠らされているPPO(不活性型PPO)について調べています。
つまり、不活性型PPOの活性が発現される特別な場合が分かれば、その時こそがPPOの存在理由を示しているからです。
可能な技術提供; 酵素精製、植物細胞の培養、色素精製 |
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ベタシアニン生合成経路のうち、チロシンからDOPAへの過程を中心に研究を行っています。

PPOの不活性型酵素が、いろんな刺激で活性化されるメカニズムの推定図です。 |