概要:音響管を用いて声道形状を表現し,形状やその変化に基づいて音声を合成する融通性の高い手法の研究を行っています。
背景:人間は,舌や下あごを動かして意図する音声を生成しています。声帯から口唇までの呼気が通る空洞部分は声道と呼ばれ,舌や下あごの動きによりその形を変えますが,工学的には声道を音響管と見なすことができます。声道は,その長さ方向の位置によって断面積が異なるため,円柱の形状をした微小な音響管を連続的につないで表現します。種々の音声合成手法の中で,声道音響管の形やその形状変化を利用する方法があります。音声データを収集し,それを加工して合成音を生成する手法に比べると,この方式の実用性はまだ途上ですが,録音音声を必要としない利点があります。男性や女性,子供の声道形状を想定した声道の大きさの設定や,声道が動くスピードの設定により,話者のバリエーションや話速の制御などの融通性に富む合成が期待される方法です。