1)非翻訳性RNAを標的としたアンチセンス核酸によるがん細胞選択的増殖阻害

 ヒトのゲノムDNAからは、遺伝情報を運ぶmRNA以外に、タンパク質に翻訳されない非翻訳性(non-coding)RNAが多数転写されている。それらの非翻訳性RNAの一部は細胞内で様々な機能を担っていることが明らかになりつつある。我々は、それら非翻訳性RNAの機能解析を進めているが、今回染色体セントロメアから合成されるサテライト非翻訳性RNAを特異的に分解する特殊な修飾RNA/DNAアンチセンス核酸(Sat I ASO)を利用し、がん細胞選択的に増殖を阻害する技術を開発した。

 

 

2)放線菌培養抽出液ライブラリーを用いた細胞機能制御化合物のスクリーニング

 ヒトなど真核生物の細胞核内には、スペックルを始め、20種類を超える様々な構造体が存在し、遺伝子発現を協調的に制御している。我々は、それら核内構造体の形成や機能を阻害する複数の化合物を放線菌の培養上清サンプルから同定した。それらの化合物は、細胞の増殖やがん細胞の浸潤に関わる選択的mRNAスプライシングなど、核内構造体による反応を制御する新規ツールとして利用できる。