組合せ論におけるデザインとは, 有限集合のある均整をもつ部分集合のことであり, 実験計画法において効率的な実験を実現するために導入された概念である. このデザインの概念は, アソシエーションスキームと呼ばれる良いグラフ分割の理論の枠組みの中で拡張され, 統計学に応用される直交配列や, 直交多項式論と相性のよい球面デザイン, 情報理論に応用される誤り訂正符号などの概念と自然に結びつく.
 

● アダマール行列(図1)は, 一種のデザインである. アダマール行列は, 統計学・情報通信・情報セキュリティ・量子情報理論など様々な研究分野に応用がある. 一方, 「どのような位数に対しアダマール行列が存在するのか?」という基本的な問題は, 組合せ論における大きな未解決問題である. その存在問題の解決を視野に入れ, 構成法の研究・ アソシエーションスキームとの関係・相互不偏基底(MUB)などへの応用について研究を行っている.
 

● 強正則グラフ(図2)やアソシエーションスキームは, グラフの中でもその隣接行列や固有値で特徴づけることができる「良い」グラフ(分解)である. 特に, 有限体上のcyclotomicスキームは, 差集合などの群上のデザイン構造や射影的な巡回符号などとも関係がある. これらの組合せ構造の存在性の問題とその有限幾何学への応用について研究を行っている.