ナノカーボン物質の合成法と新規ナノ構造物質の開発

炭素は一重結合から三重結合までのさまざまな結合形態を取って、幅広くしかも構造によっては既存物質を凌駕する機能を発現できる。独自に開発した液面下化学気相合成法(サブマリン式基板加熱法)では急峻な温度勾配中でナノカーボン物質の合成が可能であり、2014年には新規のつぼ型ナノ物質「カーボンナノポット」の創製に成功した。カーボンナノポットには奥深い有底メソ孔と偏在密集したグラフェン端を持つなどの特徴があるため、それを活かして医療やエネルギー、環境などのさまざまな分野への応用に取り組んでいる。

 

第一原理計算によるナノカーボン物質の構造と物性発現機構の解明

ナノカーボン物質はナノ構造の違いによって、電気・磁気・光学・化学・力学的に興味深い性質を発現する。その構造を特定して、物性発現のメカニズムを解明するために第一原理計算によるシミュレーションを活用している。これまでに、光還元により酸化グラフェンが磁性を持ち、新たな光吸収を示すことが共通のエネルギー構造変化に起因していることを明らかにした。また、ケルビン・フォース・プローブ顕微鏡により見出されたカーボンナノポットの表面電位変調の起源解明においても第一原理計算を活用している。