多結晶材料の機能特性は,材料に不可避的に存在する結晶粒界・異相界面の存在に著しく影響されます。結晶粒界は,破壊や腐食などの優先的な場所となり材料の力学特性劣化の原因となるばかりでなく,例えば,多結晶太陽電池においてキャリアの再結合中心として作用し,光エネルギー変換効率低下の主因とります。このようなことから,結晶粒界は,従来,多結晶材料の特性の低下・劣化にかかわる「負」の影響因子として考えられてきました。しかしながら,粒界構造と特性に関する基礎的研究から,粒界には個性があり,必ずしも全ての粒界が材料特性劣化の原因となるとは限らないことが明らかになってきています。また,粒界は結晶粒内とは異なる多様な原子配列を有することから,粒界・界面を起源とした特異な機能がしばしば現れます。本研究では,そのような特異な特性を「粒界機能」ととらえて,格子欠陥である結晶粒界を積極的に活用し,イノベーションに資する材料研究に取り組んでいます

 粒界の多様性を積極的に活用して新たな物質の創造を目指す粒界工学は,金属材料を主とした研究が行われていますが,むしろ,粒界における電子状態に原子結合の方向性や電荷の中性条件など,多様な要素が関与する機能材料にこそ革新的な変革を与える可能性を秘めています。

【これまで実施した研究課題】