技術の概要と特徴
- 磁気を用いた医療用画像化装置にMRIがあります。MRIは磁気と電波によって画像を作成するため、被ばくがなく、多くの医療機関で使用されています。
- 本技術は、位相差強調画像化法(Phase Difference Enhanced Imaging: PADRE)と呼ばれる、熊本大学発の技術です。MRI位相情報と呼ばれる従来医療用MRIでは使用される事がほとんど無かったデータを利用し、物質の微小な磁性の違いを画像化できます。
- 高空間分解能画像(< 0.5 mm)で画像化可能で、sub-boxel以下の極めて小さな血管や出血の描出なども描出可能です。(図1)
- 描出する(選択する)磁性帯域は自由で、対象磁性(位相)を変えることで、画像化する対象を変えることができます。図2は脳内のミエリンに主に対象にすることで、脳内の神経束(図の場合は視方線や皮質下白質)を画像化(低信号化)したものです。
- ミエリンの脱落は、パーキンソン病のような神経変性疾患に、特徴的に現れるため、これまで捉えることができなかった微小な脱落の様子を画像化できます。
技術の優位点
- 従来のMRIが使用可能。
- 一度の撮像で、図1,2のような複数の画像が再構成可能(時間短縮)
- 追加の機材を購入せずにすむため、投資が極めて安価
- すでに国内外で医療利用がされており、医学的に確か
- 特許が国内外で成立しており、また他の特許との競合がない
社会的波及効果
- 臨床機で稼働する医療技術であるため、世界的に利用可能
- 被ばくしないMRIを用いることで、検査が比較的安全
- 脳ドックなど、健常者にも利用することができるため、ごく早期の変性疾患の器質的変化を捉えることで、早期発見が可能。
将来展望
- 脳ドック学会で指摘されているように、認知症と関連のある微小出血を確実に捉えることで、認知症の新しい側面からの検査が可能になると考えられる。
- 変性疾患の器質的原因を特定することで、鑑別が難しかったパーキンソンとパーキンソニズム間の鑑別に有用と期待できる。
- 将来開発されることが期待されている、大脳白質ミエリンの回復を促す薬剤の効果判定に有用なため、臨床はもちろん、薬剤開発に有用と考える。特に、本技術は微小な変化を捉えられるため、鋭敏に効果を観察できると期待できる。