放射線は,手術療法,化学療法と並びがん治療の3大療法として広く用いられている.放射線治療では,効率よく,腫瘍へ放射線を集中させるために,患者CT画像を用いた放射線治療計画が不可欠となる.その際,患者体内における放射線の挙動を予測するため,放射線シミュレーション技術が用いられる.

 放射線と物質の相互作用は,ある確率分布に従うランダムな現象であるため,同じ確率的な事象を対象とするモンテカルロ法は最も精度良く放射線の挙動をシミュレートできる手法である.一方で,正確なシミュレーションには,入射する放射線のスペクトルや対象とする物質の元素構成を正確に,把握する必要がある.

 本研究室では,モンテカルロ法を用いて,Figure 1に示すようにCT装置や直線加速器などの医用放射線装置をモデリングし,Figure 2に示すような放射線検査における患者被ばく線量の評価や,放射線計測器の感度特性の分析を行っている.

  本技術は,放射線治療における放射線の正確な挙動のシミュレートを可能にし,放射線治療の成績向上が期待される. また新素材の開発や新たな放射線計測器の開発と組み合わせることにより,放射線特性の分析や改善を図ることが可能である.