ミスフィット項目とミスフィット受験者

ミスフィット項目とは, 想定したモデルに適合していない応答があったテスト項目であり, ミスフィット受験者とは, 想定したモデルに適合していない応答をするテスト受験者である。例えば, 英語力の高い受験者が間違ったり, 英語力の低い受験者が正答したりすることが多いと,その項目はミスフィット項目と判断される。具体的な判断基準としてはt値が2.0より大きい場合, ミスフィット項目と見なされる。ミスフィット項目を削除すれば、より信頼性の高い項目困難度パラメータと受験者能力パラメータを得られることが予想される。

項目困難度パラメータ

項目困難度パラメータの「0」は, 測定尺度の中心に置かれた受験者能力平均値に相当する「平均的な困難度」の項目の困難度であることを示しており, 負の値は「平均的な困難度より易しい」度合い, 正の値は「平均的な困難度より難しい」度合いを表す。例えば, 項目困難度パラメータ0とは, その数値と同じ受験者能力パラメータを持つ受験者がその項目に正答する確率が50%と推定される。

受験者能力パラメータ

受験者能力パラメータの「0」は, 尺度の中心にあって「平均的な能力を持つ」ことを表し, 負の値は「平均的な能力より低い」度合い, 正の値は「平均的な能力より高い」度合いを示す。ある受験者が2つの試験で同じ正答率を残したとしても, テスト難易度に依存する古典的テスト理論の指標からは, 同じ能力水準にあると断定することはできないが, ラッシュモデルの能力パラメータを導入することで, 同一の間隔尺度上で比較することが可能となる。

ミスフィット項目とミスフィット受験者を産み出す要因

例えば、Shimatani, Norizuki, & Ito (2018)は, 日本人英語学習者に見られる傾向として, 国際コミュニケーションにおける聞きなれない固有名詞の影響を強く受け, 実力を発揮できない受験者が多数存在することを示唆している。

参考文献

Shimatani, H., Norizuki, K. & Ito, A. (2018). “An Investigation into Person Misfit and Ability Measures: A Focus on Performance on English Proficiency Tests,” Kotoba o Amu,  ed. by Nobuaki Nishioka, Minoru Fukuda, Kenji Matsuse, Nobuo Hase, Takafumi Ogata, and Mikio Hashimoto, 317-328, Kaitakusya, Tokyo.