河川改修や洪水調整池等の治水整備の推進は,洪水による被害や犠牲者を着実に減少させてきた.ハード整備による水害頻度の減少は,かつて河川の氾濫原だった地域の都市化を促し,国土が狭小なわが国では経済活動を支える人口の受け入れ先ともなった.一方で,ハード整備による洪水対策は,ある想定された水準までの防災対策であり,その水準を超えた場合の対策については顧みられていない.したがって,想定された水準を超えた洪水が発生した場合,そのような地域は,都市化されたが故に以前と比べて被害が甚大となる.これまでの治水対策事業は,想定される洪水に対して地域の治水安全度を高めるとともに,土地利用の変化に伴い低頻度高被害リスクを孕むというジレンマを抱えながら進められてきた.

 近年,従来からのハード対策に加え,開発制限や建築規制による土地利用規制を組み合わせた流域管理的治水が注目されている.

 本研究では,熊本市の水害危険地域を対象に遊水池整備や土地利用規制の効果を定量的に評価し,今後の流域管理的治水について検討している.