●コンサートホールだけではない音響設計
 音から建築空間を設計する「建築音響学」は、大きく騒音防止計画と音響設計計画の2つの柱から成ります。騒音防止計画はじゃまな音を建築的に遮断し静かな空間を実現すること、音響設計計画は静かな空間を実現したのちに、聴きたい音をよい音で聴くために響きを調整することが目標です。
 音響設計はコンサートホールの設計とともに発展した分野ですが、それを必要とする空間は幅広く存在し、その中で取り組みが遅れているのが保育園など発達期の幼児が長時間を過ごす空間です。

●子どものための音響設計~吸音による、聞き取りやすい空間づくり
 言語や聴覚の発達期にある幼児は言葉の聞き取りにおいて周囲の騒音や残響の影響を受けやすいことが知られています。しかし、日本には保育施設の音響設計について基準や指針が存在せず、健康な発育に望ましい環境であるべき保育空間の大半が、残響過多のため言語コミュニケーションに支障のある空間となっている現状があります。当研究室では保育空間への吸音の導入の効果について実証的な研究を進め、効果の検証と音響設計の保育現場への普及を目指しています。