●強風による構造物被害拡大要因の分析
 台風や竜巻などの突風による強風は、建物の骨組だけでなく屋根葺材や外壁などの外装材に大きな被害をもたらすため、広範囲に経済的な影響を及ぼす。たとえば、損害保険の支払金額は地震や水害を大きく上回り、社会全体に影響を与えている。
 強風による建物被害に対して、最も重要な要因は風の強さであるが、建物が木造なのか,鉄筋コンクリート造なのか。また、屋根葺材は瓦か、金属板か等の構造物固有の特性によって、強風被害の程度は大きく異なる。
 本研究では、強風の強さだけでなく風速や風向の変動の大きさ、建築材料や施工法等、強風被害の拡大に影響を及ぼすと考えられるさまざまな要因について考え、複雑に絡み合う被害拡大要因の寄与率を分析し、より高精度に強風被害予測を行うことを目標としている。
 強風被害要因が明らかになれば、建物の耐風設計法を検討したり、自治体等での風水害の防災対策を検討するために利用できる。

●質的変数の指標化による被害予測手法の提案
 強風被害予測のための被害関数は存在するが、その予測精度は決して高くない。精度向上のために、建物の構法、屋根の材料や形状等の数値では表しづらい被害拡大要因を定量的に扱えるように指標化して、被害関数に組み込み、強風被害予測の精度向上を目指している。