口腔がんは稀少がんであり、他癌腫に比べて治療開発が著しく遅れている。進行口腔がんに対する標準治療は手術または化学放射線療法とされるが、超高齢社会を迎え、全身状態から標準治療が行えない患者が増加している。抗腫瘍ウイルス(OBP-301)は低侵襲かつ高い抗腫瘍効果を発揮することから近年注目され、既に他癌腫では臨床研究が開始されている。

当研究室でも既に、基礎実験においてOBP-301併用放射線治療が目覚ましい治療効果を発揮することを見出してきた。今後はこの研究成果をヒトへの投与も含めて更に推進し、革新的口腔がん治療の実用化を目指す。

 

これまでの研究成果

われわれはOBP-301OSCCにおける有望な新規治療法となり得ると考え、基礎研究を進めてきた。その結果、OBP-301は単独でOSCC細胞に十分な抗腫瘍効果を発揮することを見出した。更に、放射線耐性OSCC細胞株を含む複数のOSCC細胞株において、放射線照射に対して強力な増感効果を発揮することを確認した。また、放射線耐性OSCC細胞を用いたCell line-derived xenograft modelおよびPatient-derived xenograft modelを用いた前臨床モデルにおいてもOBP-301併用放射線療法は放射線療法単独に比較して高い治療効果を示した。

口腔がんにおいて放射線耐性細胞やPDXモデルを用いた前臨床研究は無く、われわれの成果は他の追随を許さない。また、下記の様に研究実施体制は稀少がん研究を扱う上でも十分に整備されている。本研究は、超高齢社会を迎えた本邦における高齢者がん治療にブレークスルーをもたらし得る。本研究を通して口腔がんの新たな治療選択肢を創出し、口腔がん制御を通じて人々が”話す”、“食べる”を維持して人生を謳歌できる社会作りに貢献したいと考えている。