【背景・目的】

 腹腔鏡手術は低侵襲であることから飛躍的に普及しつつあり、2018年4月には子宮頸癌に対する腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術が新たに保険適用となった。一方で、開腹手術との予後がランダム化比較試験で検証され、腹腔鏡手術群の予後が、開腹手術群よりも劣ることが報告された(図1)。

図1. 子宮頸癌における開腹術と腹腔鏡手術の生存曲線

 これをもって、子宮頸癌に対する腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術の施行症例は減少傾向にある。しかし、この試験では、子宮頸癌では通常みられない腹腔内播種で再発する症例等が認められたことから、子宮を腟から切断する際に、腹腔鏡手術で腹腔内に送気するCO2ガスが病巣の腫瘍細胞の腹腔内への散布・増殖をきたしていることが考えられている。

 現在は、腹腔鏡操作に先立ち、経腟的に子宮頸部から2-3cmの部位で腟の前後壁を縫合し子宮頸部を包み込むようにして腟カフを形成することで、腫瘍の腹腔内散布を予防する工夫が行われている(図2)。

図2. 病巣の腫瘍細胞の腹腔内散布予防のための腟カフ形成

 腟カフ形成に代わり、子宮腟部に密着し病巣を密閉できる材質が開発されれば、子宮頸癌治療にとって福音となることが期待できる。

 

【研究方法】

  1. 形状変化性に富み、吸水性密閉性の両者を担保できるような素材を経腟的に挿入し子宮頸部を密閉する。
  2. 素材が子宮頸部に密着した後、時間をおいて剥落せず腫瘍細胞の漏出がない事を腟内の洗浄細胞診で確認する。

 本技術が確立されることで、腹腔鏡手術では腟カフ形成に代わり本法が主流となることが考えられる。さらに、開腹術に劣らない予後が期待でき、低侵襲である腹腔鏡手術のさらなる普及によって子宮頸癌診療に寄与できる。