【研究背景】
既存の抗体医薬品の問題点
- 哺乳細胞を用いて生産するため、生産コストが高い
- 複雑な糖鎖構造を有し、品質管理に多大なコストを要する
- 標的が細胞外に限定され、標的が枯渇しつつある
- 組織浸潤性が低い
一本鎖抗体 (scFv) の特徴
メリット
- 大腸菌を使用して低コストで生産が可能である
- 細工が容易である
- 低分子であり、組織浸潤性が高い
- 血中半減期が短く、血中濃度のコントロールが容易である
デメリット
- エフェクター機能を持たない
- 血中半減期が短いVH-VL間の相互作用を介した凝集性を有する
【研究目的】
scFvの開閉状態ダイナミクスを抑制することで、凝集性を改善するための汎用的手法の開発
【研究概要】
インテイン反応を利用した大腸菌体内における環状 scFv の調製
- 自発的に反応が進行するため、特別な試薬や手間が不要
- 大腸菌体内で合成と環状化を同時に行うことで、タンパク質調製の工程を大幅に短縮できる
- 一本鎖抗体 (scFv) を環状化することで閉じた状態を維持
(会合体の形成 (凝集性) の抑制、保存安定性の向上、凍結乾燥に伴う活性低下を著しく抑制)
- 環状化技術は汎用性が高く、一般に一本鎖抗体に適応可能
- 環状化したscFvは抗原親和性および熱安定性を損なわない
- リンカー内に遊離チオールを持ち、部位特異的化学修飾が可能