【背景・目的】

 牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)は一部の感染牛でリンパ腫を引き起こす病原性を持つ。日本ではBLV感染牛も食肉として流通が認められているが、と畜検査時にリンパ腫発症を認めた場合、法律により食肉として出荷されず廃棄処分となることから、生産農家にとっては大きな経済的損害となる。
 しかしながら、今現在牛伝染性リンパ腫の有効な発症リスク評価法・客観的診断法が存在しておらず、畜検査時の肉眼的所見による診断が行われている状況にある。

 

【研究概要】

「レトロウイルスDNAが宿主細胞DNAに組み込まれる特徴を生かした、新規腫瘍細胞定量検査法」
 本研究における発明内容として、下図に示すようにウイルスの組み込み部位の宿主DNA配列の多様性を見るために、ウイルスと宿主ゲノムのつなぎ目の増幅を行う。腫瘍細胞クローンが出現している場合は宿主側も均一な配列となる。次に増幅したものを電気泳動により確認し、サンガー法を用いたDNA配列の決定を行う。
 以上の方法により、従来の検査法と新検査法の定量値と臨床状態との関係性を見ると、上記の新検査法では発症・非発症の判別が可能であることがわかる。

 

 本発明手法の特徴としては下図に示すように、ウイルスと牛ゲノムのつなぎ目まで解析対象となり、腫瘍細胞の定量化を可能にした上で低コスト且つ簡便性も高いものとなった。


(本研究は東京農業大学小林朋子准教授との共同研究)