【背景・目的】
[1] 情動・心・脳
わたしたちは,実に多くの情動を抱きながら日常生活を送っています。これらの情動を、わたしたちは「心」やそれに付随する言葉を使用して表現することがありますが、すべては「脳」の働きによって引き起こされるものだと考えられています。この技術の紹介は、計測された脳波を多方面に解析して多成分に分離することで、作業に対して生起されている複数の情動を切り分けられないかという可能性試験によるものです。
【研究概要】
[2] 帯域別脳波の時空間解析によるジグソーパズル中の気分評価
下図の左は帯域別脳波パワートポグラフィ―の経時変化で、上段が「疲労-無気力あり、活気-活力なし」、下段が「疲労-無気力なし、活気-活力あり」の場合です。一方、下図の右はθ帯域脳波パワー変化率左右差の経時変化で、左側が前頭部、右側が頭頂部、上段が「疲労-無気力」有無の相違、下段が「活気-活力」有無の相違です。このように、評価された気分の相違が脳活動の経時変化の相違として表現できています。
[3] 脳波指標の再帰型サポートベクター回帰による模擬運転中の眠気評価
後頭部から計測された脳波のα帯域パワー、βおよびα帯域パワーの比、θ~αおよびβ帯域パワーの比に加え、Hjorthによって提案されたActivityとMobilityの合計5指標を説明変数、 眠気アンケート「KSS」による9段階の眠気レベル(黒実線)を目的変数とする再帰型サポートベクター回帰モデルを独自開発しました。その結果、相関係数0.83±0.03、二乗平均平方根誤差0.15±0.03で眠気レベル(赤破線)を推定できています。