【背景・目的】

 強誘電体は半導体pn接合には現れない特異な光起電力効果を示す。強誘電体光起電力効果の特徴として①『材料のバンドギャップを超える光電圧の発生が可能』、②『光電流の大きさや方向が入射光の偏光状態に依存する』といった点が挙げられる。一方、強誘電体の光応答は半導体pn接合に比べ弱く、特に可視光領域における光応答の向上が求められている。

 

【研究概要】

 ドーピングによる強誘電体光起電力効果の増強: 強誘電性BiFeO3 (BFO)薄膜およびMn-doped BFO (Mn-BFO)薄膜の光起電力特性を比較した。BFO、Mn-BFO共にhν = 3.1 eVの光照射下においてバンドギャップ(Eg = 2.7 eV)を超える高い開放電圧(Voc)を示した。BFOではhν < Egの可視光領域において光応答が急激に低下したのに対し、Mn-BFOhν = 2.4 eV, 1.9 eVにおいても顕著な光応答を示した。これはドーピングによりMnに由来する不純物準位がバンドギャップ内に形成され、不純物準位を介したキャリア励起が可能になったことに起因すると考えられる。またMn-BFO可視光照射下において偏光に依存する光電流を示した