【背景・目的】

 線虫は、その多くが体長1mmにも満たないような、小さな生き物です。植物に感染する植物感染性線虫は、作物の根などに寄生し、農作物を枯らし、商品価値を奪ったりしてしまうなど、世界で年間数十兆円の農作物被害があると試算されています。線虫被害を軽減する線虫トラップ剤の開発を念頭におき、線虫誘引物質の精製・同定・化学合成を行っています。

【研究概要】

シロイヌナズナ種皮ムシレージの線虫誘引活性
 モデル植物シロイヌナズナの種子が線虫誘引活性を持つことを発見しました。種皮ムシレージの分泌はこの誘引活性に必要です。発芽時に、ムシレージを押し出さない変異体の線虫感染率が野生型より低くなりました。

アマムシレージラムノガラクツロナン-Iの線虫誘引活性
 作物植物アマの種皮ムシレージも線虫誘引活性を持っています。アマムシレージ成分のラムノガラクツロナン-I(RG-I)、具体的にL型ガラクトースと結合するRG-Iは線虫誘引が有効です。植物根をアマムシレージに浸すことは線虫感染率を向上させます。