【背景・目的】

 ⼼不全パンデミックを迎える超⾼齢社会の⽇本において、健康寿命の延伸と増⼤する医療費の抑制は喫緊の課題である。特に、うっ⾎性⼼不全による再⼊院や併発する脳梗塞を予防することが健康寿命の延伸と医療費の抑制につながると期待される。しかし、抗凝固療法は、出⾎リスクの⾼い⾼齢者⼼不全では、 出⾎合併症により予後を悪化させる可能性もある。そこで、リスク層別化が可能な⾎栓形成能の評価指標・予測モデルの開発が望まれる。

【研究概要】

 本研究では、心不全急性期の血栓形成の原因となるVirchowの3徴(過凝固の状態血流のうっ滞血管内皮細胞障害)を、3つの評価指標を用いて評価する。従来の臨床情報に、総合的な血栓形成能を定量化可能なTotal Thrombus-Formation Analysis System(T-TAS)の血栓形成能指標と心不全患者の心エコーやCT / MRIのComputational Fluid Dynamics(CFD)による血流解析から得られる血流うっ滞指標、オミクス解析で特定した血管内皮細胞障害を反映するバイオマーカーの3つの指標を加えることで、Virchowの3徴を再定義し、日常診療に応用可能で予測精度の高い意思決定ツールの開発と検証、そして抗血栓療法の確立を目指す。