【背景・目的】

 血管の中で血液が固まると、血流が滞り、酸素や栄養分を送り届けることができなくります。一方、血管が破れた場合、血液が固まらなければ、出血多量で血液循環を維持できなくなってしまいます。血液は時と場合に応じて、固まったり固まらなかったり、適切にコントロールされる必要があり、これが崩れると血栓症や出血傾向をきたしてしまいます。私たちは血栓形成のメカニズムの解明評価予防新規治療法の開発を目指して研究しています。

【研究概要】

 我々は企業との共同研究において、血液の固まる力を定量的に評価できる新規検査法:総合的血栓形成能解析システム®の開発に取り組みました(下図)。これによって、血流下で血小板とフィブリン*1が協調して血栓を増大させる過程を定量的かつ視覚的に捉えることができるようになりました。
*1 血液凝固に関わるタンパク質

 

 また、病的状況下において、血管内で血栓ができやすくなるメカニズムの解析も進めています。そのなかで、損傷細胞から漏れ出てくる生理活性分子(DAMPs)*2の働きや、好中球が放出する細胞外トラップの働きに注目し、これらが血管内血栓形成を引き起こす仕組みを研究しています(下図)。
 重症感染症(敗血症)や、それに伴う播種性血管内凝固症候群(DIC)*3のような病態では、血液中のDAMPs濃度が高まり、遠隔臓器障害の一因になっているため、DAMPs濃度を解析する新規検査法も、企業と共同で開発しています。
*2 危機を知らせるアラームとして働き、周囲の細胞を活性化する分子
*3 全身のあちこちの血管内で血栓ができ、細い血管をつまらせる病気