【背景・目的】

 がんの発生・進展におけるmTOR・オートファジー・代謝制御軸の役割は、これまで多くの研究がなされて来た。しかしこのmTOR・オートファジー・代謝制御軸の上流シグナルとその発がんにおける役割の全貌は未解明で、そこにがんの理解と克服への手掛かりがある。
 馬場は、がん抑制遺伝子産物FLCN/FNIP複合体がライソゾーム上に存在し、新規栄養感知機構として機能するとともに、mTORC1を介してオートファジーや代謝制御のマスターレギュレータである転写因子TFE3/TFEBの活性を制御する事を、これまでの一連の研究で明らかにして来た。Flcn欠損マウスはTfe3の活性化と共に腎上皮細胞の異常増殖を引き起こす。また、転座によるTfe3の恒常活性化が、ヒトと同様に腎癌を引き起こす事をマウスモデルを作製して明らかにして来た。
 本研究は、馬場がこれまで一貫して研究してきたFLCN/FNIP栄養感知機構を軸に「mTOR」「オートファジー」「代謝」を一元的に捉え、発がん・がんの進展機構をこれまでになかったアプローチから紐解く。

 

【研究概要】

分子生物学、細胞生物学、マウス遺伝学を駆使して研究を推進