【背景・目的】
糖尿病では、様々なタンパク質の糖化反応から生成されるAGEs (Advanced glycation end-products : 生体メイラード反応後期生成物) が糖尿病血管合併症の促進に寄与していると考えられている。熊本大学代謝内科では、東海大農学部、島津製作所との共同研究として、指尖部の皮膚AGEsの蓄積レベルを非侵襲的に測定可能なAGEsセンサを開発し、臨床応用として糖尿病最小血管合併症の有病数との有意な正相関を認めることを報告している (J Cli Biochem Nutr.58(2):135-140,2016)。今後は、糖尿病大小血管合併症の進展度との相関性が報告されている血糖変動幅や低血糖回数・時間との関連性など他バイタルを含め総合的に評価することで、指尖部AGEセンサを用いた非侵襲的AGEs測定を、糖尿病大小血管合併症の予見因子としての有益性を見出すことを主目的とする。
【研究概要】
【社会貢献や波及効果について】
2型糖尿病患者において、血管合併症の進行をいかに予見するかは、患者のQOLや予後に繋がる重要な課題であり、さらには生命をも脅かす深刻な疾病である。 現在、血管合併症の発症・進展を予見し得る直接的な評価法は少なく、現在臨床研究を進めている指尖部AGE測定は、2型糖尿病患者の大小血管合併症発症リスクや進展度の新たな評価法の一つとなる可能性があり、2型糖尿病患者のQOLの向上に繋がると期待される。この血管合併症のうち、大血管障害の発症リスクは、血糖コントロールの状況、特に血糖変動幅の増大や低血糖発現回数などとよく相関するが、その測定法での侵襲性やコストの面からも血糖変動幅や低血糖回数と相関性のある侵襲性の低い簡便な新たな指標が求められており、予防、早期発見や早期治療をサポートできる技術での社会実装が望まれている。
【優位性について】
指尖部AGE測定装置は、採血を必要としない非侵襲性が特徴であり、より簡便で経済性に優れた測定器が普及することで、測定機会の多様性に伴う治療・介入を含めた新しいビジネス創造が期待される。