【技術紹介】
マグネシウムやチタン等のHCP金属の変形や疲労破壊挙動は、鉄やアルミなどとは多く異なるが、その原因については未解明な点が多い。そこで、HCP金属単結晶および多結晶材を用いた機械試験を行い、光学顕微鏡、電子顕微鏡による観察や計算機シミュレーション用いて、変形および疲労破壊機構に関する基礎研究を行っている。その成果は、HCP金属の強度や加工性の効率的な改善に役立つ。
- マグネシウムおよびチタン単結晶における変形機構の解明
hcp構造であるマグネシウムやチタンでは、多数のすべり系や双晶系の活動が活動するとされているが、各変形様式の活動性や変形機構は不明な点が多い。そこで、ブリッジマン法および歪焼鈍法を用いて、大型単結晶試験片を作製し、引張試験、圧縮試験、3点曲げ試験、せん断試験などを行い、各変形様式の詳細な機構を明らかにする。
- マグネシウム合金およびチタン多結晶材料におけるすべり系および双晶系の活動過程の解明
hcp金属の多結晶材料においては、変形歪の段階に応じて複数の変形様式が活動すると考えられるが、それらの活動性と機械的性質の関連性は不明である。そこで多結晶圧延材を用いて、光学的なマクロ観察と結晶方位から活動する様式を調査し、それらに対する合金元素や組織の影響を明らかにする。
Mg合金の表面におけるすべり線
- マグネシウムおよびチタン単結晶における疲労破壊機構の解明
輸送機器等構造材料では静的な強度だけでなく、疲労破壊強度も重要である。hcp構造を持つ金属は疲労破壊挙動に結晶方位による依存性が強い。その機構を明らかにするために、小型薄片状の試験片でも疲労試験ができる共振式片持ち梁疲労試験機を開発し、これを用いて単結晶の疲労試験を行っている。
共振式片持ち梁疲労試験機
- 分子動力学シミュレーションによる変形機構の解明
変形や疲労破壊は、いずれも結晶内の原子の運動によって生じる。その運動過程を直接観察するのは困難である。そこでコンピュータを使ったシミュレーションによる理論解析により、変形や破壊の素過程を解明する。
Mgの圧痕形成のシミュレーション