【技術紹介】

 原子間ポテンシャルが分かれば原子の振る舞いを微視的な観点から理解することができる。一般的に大変複雑である原子間ポテンシャルを、機械学習を用いて構築したものが機械学習原子間ポテンシャル (MLIP) である。高精度だが計算コストの高い第一原理計算の代わりに、そのデータを機械学習することで精度と低い計算コストの両方を獲得したMLIPは物性研究において革新をもたらしている。

 高精度なMLIPの構築には、「物理的な構造記述子の選択」「高い多様性を持つ教師データの生成方法」「計算コストを考慮した学習方法の精錬」が必要であり、これらを損なうと著しく精度が減じる恐れがある (下図左)。我々は、第一原理計算では到達できない空間スケール・時間スケールでの分子動力学シミュレーションをMLIPを用いて行い、自由エネルギー、誘電率、比熱、熱伝導度、構造因子など統計量を要する重要な物理量の計算を達成した。固体 / 液体相転移、衝撃圧縮過程、光励起状態の非平衡系における原子ダイナミクスの調査にも適用している。扱った物質は、水、金属 (Rb, Na等)、半導体 (C, SiO2, 銀カルコゲナイド, GeSe2, PTO / STO等) など多岐に渡る。
 

超イオン伝導相Ag2Seの研究例