【背景・目的】

 播種性血管内凝固症候群 (DIC) は、なんらかの機序により血管内で凝固系の活性化が惹起される予後不良の病態である。DICには凝固活性化に引き続き線溶活性化も惹起され、いずれもコントロール可能なものと不可なものが存在する。コントロール不可の者に対して、現時点でDIC診断基準においてこれらに対応するものはなく、本報告ではα2-アンチプラスミン (α2- AP) を利用した特に線溶反応における治療戦略を提案する。
 

【研究概要】

~線溶反応~
 DICの病態では、血栓形成に引き続き、線溶系の活性化が惹起される。線溶反応は線維素 (フィブリン) 溶解反応の略で、凝固活性化の結果生成したフィブリンを主にプラスミンが処理する反応である。プラスミンはセリンプロテアーゼインヒビターの一種であるα2- APによって不活化される。フィブリン表面からプラスミンが遊離した時や安定化フィブリンの維持など空間的、時間的に線溶反応を制御している。
前述のように線溶反応はα2- APによって制御されているが、プラスミンと1:1の比率で複合体が形成されるため、線溶系の活性化によりα2- APは消費性に容易に低下する。濃度が60%を下回ると、フィブリンの早期分解が惹起され出血傾向を呈する。

 

DICの病態、特に線溶反応との関連については十分議論されていないが、患者予後改善のためには重要である。その指標としてα2- APが有用な検査項目であり、アンチトロンビンとの比をとることで予後判定にも使用できる。