【背景・目的】

 糖尿病患者の高血糖状態は糖尿病合併症の発症・進展に影響を及ぼすため、患者の血糖値推移を把握し合併症リスクに応じて個別に介入することが重要です。しかし臨床で経時的に患者血糖値を測定することは困難です。我々は、メタボリックメモリーとして身体に蓄積された高血糖状態を、たった一回の採血で過去10年間の高血糖状態を推算する方法を開発しました。本技術を利用して患者の予後予測・治療に貢献していきたいと考えています。

 

【研究概要】

メタボリックメモリー: 「高血糖状態は身体に記憶され、合併症発症・進行に長期的影響を及ぼす」という概念。

この概念を定量評価するため、高血糖の程度・期間を反映するHbA1c曲線下面積 (AUC) を指標に eGFR の変化量 (糸球体ろ過量の変化) を予測するモデルを患者381名のデータから構築した (下図)。


モデル式: 合併症のリスク (eGFRの変化量) を、Imax (各糖尿病合併症の状態やリスクファクターで記述) とAUC50 (年齢・性別等で記述) で予測できた。

 

モデル図: モデル式で記述した非線形予測モデル曲線。Imaxの変化はeGFRの変化量の増減、AUC50はAUCHbA1c≥6%の増減に寄与する。

 

モデル式のAUCHbA1c≥6%を取得するためには経時的なモニタリングが必要


一度の採血で得られる血中のアミノ酸の重量比によりAUCHbA1c≥6%を予測することができた (182名の患者データにもとづく)