【背景・目的】

 変形性膝関節症 (膝OA) の軟骨変性そのものを抑制する治療法は存在しない。加齢変化を呈した関節軟骨に力学的ストレスが付加されると、小胞体ストレス及び軟骨細胞死の増加を招き、これがOAのメカニズムとされている。我々は、モデルマウス及び患者検体でOAの進行ともに小胞体ストレスと細胞死の増加を確認した (図1)。また、ヒトOA軟骨や老齢マウスで、軟骨細胞小胞体内でのECM蓄積が報告されている。以上により我々は、力学的ストレスで亢進したECM合成に対して相対的に不足するシャペロンを補充することによる治療戦略を立案し研究を進めている。

 

【研究概要】

変形性膝関節症 (膝OA) とは

有病者数:      2530万人
有症状患者数:  780万人
【症状】 【治療】

疼痛、可動域制限、変形、
起立・歩行障害、QOLの低下

  • 保存療法(非薬物療法、薬物療法)
  • 手術療法(骨切り術、人工膝関節置換術)

 

小胞体ストレスと軟骨細胞死 (図1)

外科手術から採取したヒトOA軟骨において、OAの進行とともに小胞体ストレス関連因子の増加を確認。
※ マウスin vivoでも確認済み。


ヒトOA軟骨での遺伝子発現変化

 

UPR (Unfolded Protein Response) シグナルであるPEAKが抑制されると、ECM分泌の減少し、ミスフォールディングタンパク増加により小胞体ストレス亢進が導かれOAが進行する。OA軟骨細胞では分子シャペロン及び細胞外基質の転写が亢進。
▶ECM > シャペロンのアンバランスが重要

 


Tan L et al. Aging Dis. 2020 Oct

Tan等の研究においても、培養軟骨細胞では、加齢で小胞体ストレスの上昇およびアポトーシスが増加するが、化学シャペロン 4-PBA の投与でそれらが改善された。