交通政策の分析技術の拡張
に関する理論・実証研究

所属:政策創造研究教育センター
 准教授・円山琢也
URL:http://www.cps.kumamoto-u.ac.jp/
研究内容
【1】 混雑課金政策の実都市圏における総合評価
 シンガポール,ロンドン,ストックホルムなどで導入されている混雑課金政策は,現実性の高い都市交通環境政策のひとつになりつつあります.最適混雑料金理論の拡張,公平性への配慮,貨物車の行動変化,エリア型とコードン型の課金方式の比較など,多方面からこの政策の分析を行っています.

【2】大都市圏における交通需要統合型ネットワーク均衡モデルの実用化と改良
 交通計画立案の基礎情報を提供する交通需要予測について,従来用いられてきた手法の問題点の一部を解決可能な交通需要統合型ネットワーク均衡モデルの実用化に向けた実証研究を進めてきました.また,トリップ・チェイン型等,新たなモデルも提案しています.

【3】誘発交通を考慮した道路整備の便益推定法
 混雑緩和を目的として道路などの交通施設整備を行うと,新たな交通需要を誘発し,結局混雑緩和にはつながらないという議論がされてきました.この議論に対する客観的な情報を提供することを目的した評価手法の確立を目指しています.また,交通需要の集計レベル別の便益指標の性質について考察を進め,便益評価における集計レベルの選択問題に対して一つの回答を示しています.
研究の方向性
・ 混雑課金方式の最適設計
混雑料金の具体的な設定において決定すべき要素は,料金レベル,課金位置,課金方式,課金収入の分配法など,さまざまです.この問題を数理的に定式化し,現実都市圏においても適用可能な計算法を開発することを目指しています.また,課金額をデポジットとみなし,その使途を限定する仕組みなど,新しい課金システムの構築も試みています

図 コードン課金とエリア課金の方式の違い (コードン課金は,区域に流入するたびに課金される. エリア課金は区域内の走行に日単位で課金がされる.)



図 コードン型とエリア型の混雑課金による 効果の比較 (D,E,Fそれぞれの領域で,最適エリア課金額は 最適コードン課金額よりも高い)
[キーワード] ネットワーク均衡モデル,費用便益分析,混雑課金
研究分野:都市交通計画,土木計画学 
高度な政策分析技術も,現実の政策立案に役に立たなければ意味がありませんので,現実都市圏への適用・実用化を重視した研究を進めてきました.ただ,どのような技術にも限界はありますので,分析技術の特徴・限界を的確に把握しつつ,それを活かした政策・計画立案のあり方を探ることも重要と考えています.