21世紀を担う超分子をつくる

―外部情報に応答する金属錯体―

大学院自然科学研究科 理学専攻 化学講座
教授・松本 尚英

E-mail:naohide@sci.kumamoto-u.ac.jp
超分子の創生
21世紀を担う超分子を創生することをめざして研究しています。光学特性、電気特性、磁気特性等の物性機能を、光、電場、磁場、圧力、温度、pHなどの外部情報で完全に制御できる新しい物質を創生しています。

スピンクロスオーバー:光により自由に性質を変える分子を創りだすことができれば、光応答分子デバイスとして利用できます。光照射などの外部情報によりスピン状態が変化するスピンクロスオーバー分子を設計、合成し、スピン状態が転移する様子をSQUID磁束計で調べます。光の波長により正、逆両方向に変換させることもできます。

単分子磁石:21世紀にぜひとも実用化にこぎつけたい物質の一つに単分子磁石があります。ひとつの分子があたかも磁石のようにふるまう単分子磁石は、これまでの磁石の概念を変えるものです。希土類イオンを含む単分子磁石を世界ではじめてつくりました。

研究成果は国際誌に200報以上報告しています。国内、国外と共同研究を展開し、本分野の世界的拠点のひとつです。
集合構造構築法の研究
生命誕生を分子進化の視点で捉えると、小さな分子が集まり生命活動をする巨大な組織体へ変化していく過程と考えられます。 分子進化の過程に倣い、物質を階層性で捉えて、小さな分子が集まり高度な組織をもつ機能物質へと導く方法を模索しています。 分子に認識能や機能ベクトルを付与し、それらを合目的に集合させる能力をも分子に内在させてより高度な分子集積体を創生する研究を進めています。 自然分掌機能や自己組織化機能を内在する分子を研究しています。

研究は合成から始まりますが、X線構造解析、ヘリウム温度から400Kまでの磁化率測定、磁化測定、光応答性、熱分析、電子スペクトルなど測定と理論計算も重要です。 合成、測定、理論計算と総合力を必要とします。 口絵は科学研究費により購入した温度可変付きX線構造解析装置です。その他最新機器が整備されています。

キラル集積、スピン転移など多重機能をもつ超分子



光、温度によりスピン状態が変化する超分子
弱いNH/p 結合により環状構造をつくる

[キーワード] 超分子, 設計, 合成, 多機能, 次元構造, 水素結合, 多元素, 磁性, 光, 温度, 国際共同研究
21世紀を担う超分子は全ての要素をもつ金属錯体から生まれます。金属錯体は幾何構造性、電子構造の多様性を兼ね備えています。周期律表にある全ての元素を使い、強い結合から弱い結合まで使うことを目標にしています。分子と対話しながら新しい物質をつくりだすことは化学者の最大の喜びです。研究は、仏、伊、スイス、ポーランドとの国際共同研究です。国際舞台で活躍できる人材を育てます。まじめな意欲ある学生を求めます。先輩の好評価により就職はきわめて良好です。