レーザ・プラズマプロセスによる環境保全のための電子材料・デバイスの作製

大学院自然科学研究科 複合新領域科学専攻 衝撃エネルギー科学講座
教授  池上 知顯

E-mail:ikegami@eecs.kumamoto-u.ac.jp
研究内容
パルスレーザ堆積(PLD)法は任意の雰囲気ガス中で固体ターゲットを高エネルギー密度のパルスレーザ光でアブレーションすることによりターゲット材料を薄膜化する方法で、装置が簡単、成膜速度が大きい、ターゲット材料との組成ずれの少ない薄膜が堆積できる、酸化物・窒化物・炭素系化合物、有機材料などの薄膜が作製可能といった多くの優れた特徴を持っています。 当研究室では金属酸化物(YBCO, ZnO, TiO2, WO3)や炭素系材料(DLC, CNx,CNT)などの薄膜化を行ってきました。作製プロセスを最適化することで、より高品位の材料生成を目指しています。
1) 機能性薄膜材料
現在、TiO2にWO3やNをドープした可視光応答型の光触媒の作製や、NOやO3ガスセンサ材料としてWO3, SnO2などの薄膜デバイス作製に取り組んでいます。 また、化学気相成長(CVD)法とPLD法を組み合わせたカーボンナノチューブ(CNT)の作製を行っております。 レーザアブレーションによる触媒微粒子の供給法や炭素源材料の選択、プラズマアシストなど単層カーボンナノチューブ(SWNT)生成プロセスの改善をおこなっています。
2) プロセス計測・制御
レーザ・プラズマを用いた材料作製プロセスの最適化を図るために、発光分光、レーザ誘起蛍光(LIF)法、ラマン分光などによるプラズマプルームや生成粒子の光学計測を行っています。 プロセスの再現性改善や自動化のために、コンピュータによるプロセス制御と遠隔モニターシステムの構築を目指しています。
応用分野
 PLD法やCVD法で作製した機能性薄膜やナノ構造材料を用いて、土壌物性(水分(pF)、pH、電気伝導度(EC)、イオン濃度)や土壌中のO3、NOラジカル濃度を容易に安価に測定できるセンサ、特に多点同時計測可能な光ファイバセンサへの応用を目指しています。カーボンナノチューブは電界電子放出源や電極材料として実用化研究がなされていますが、ガスセンサ(electronic nose)への応用も期待されています。

[キーワード] パルスレーザ堆積、プラズマプロセス、レーザ計測、機能性薄膜、環境センサ
総務省地域情報通信技術振興研究開発(SCOPE-R)「情報通信支援による環境負荷低減農業技術開発研究」において、IT技術と電気電子工学の農業分野への応用を目指し、オゾン・ラジカル、パルス高電界による土壌処理や病害虫の抑制など植物育成環境の改善に取り組んでいます。