スペースシャトルなどを利用した微小重力場を用いた研究が盛んに行われていますが、白色矮星を越えるような100万Gレベルの極めて強い重力(超重力場)下では僅かな原子質量の違いが原子の配列や濃度に大きな影響を直接及ぼし、ナノスケールの物質制御が可能になります。
我々は、日本原子力研究所と共同して、超遠心機を用いた100万Gを越える超重力場を500℃以上までの温度で発生する装置を開発し、世界で初めて構成原子の沈降を実現しました。
このような超重力場を用いた物質研究は世界的にもオンリーワンで、新しい極限物質プロセス分野を開拓すべく研究を進めています。
これまでにBi-Sb系合金、Se-Te系半導体で、原子の沈降によるナノスケールの傾斜構造の形成と結晶の微細化、結晶成長などを見出しました。
また、In-Pb系合金、Bi3Pb7金属間化合物では、傾斜構造だけでなく、相転移や分解反応を観察しています。
さらに、物質生命化学の伊原研究室との共同研究で分子の沈降や、重合反応の制御によって高分子の傾斜化と立体規則性の向上などを見出しています。 |
原子、分子の沈降(拡散): 非平衡物質プロセス
1) ナノスケールの傾斜構造、表面・界面の変調
2) 不定比化合物の組成制御、強制固溶、不純物の制御
3) 分子や基の配列・配向、結晶成長、粒形制御
4) 分解、化学反応の制御
5) 元素、同位体の分離、濃縮
原子変位による分子、結晶状態の変化: 極限物性
1) 結合、構造の変化(新規物質探査)
2) 原子変位に伴う新規物性の発現
3) 分子・格子力学へのアプローチ |
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(Newton 2004年11月号より) 図1 超重力場の物質への効果と原子の沈降 |

図2 In-Pb合金中に形成された 原子スケールの傾斜構造
100万Gレベルの超重力場(82万G,150℃,100 h)下で形成された原子スケールの傾斜構造とそれに伴う相変態が観察される. |
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